パーキンソン病の遺伝子治療:臨床研究実施に関するお知らせ

4月20日、自治医科大学付属病院において「AADC発現AAVベクター被殻内投与によるパーキンソン病遺伝子治療の第I/II相臨床研究」の第1例目の定位脳手術を実施しました。当社は本臨床研究に対し支援を行っております。

 

■ 概要

本臨床研究は今月、厚生労働大臣から承認を受けたものです。ドパミン合成に必要な芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase:AADC)遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus:AAV)ベクターを定位脳手術により被殻に注入し、安全性と効果を検証することを目的としています。対象は、進行したパーキンソン病の方6人です。研究期間は、最終症例にベクターを投与してから9か月後までです。

 

■ 治療の現状と技術

パーキンソン病は、振戦、動作緩慢、筋固縮、姿勢反射障害などの運動機能障害を主症状とする進行性の神経変性疾患です。線条体(尾状核と被殻)に投射する黒質のドパミン神経細胞が脱落し、線条体のドパミンが欠乏しています。パーキンソン病に対しては薬物や深部脳電気刺激などの治療がありますが、いずれも進行例では効果に限界があります。

本臨床研究では、AADC(ドパミンの前駆体であるL-dopaからドパミンの合成を促進する酵素)の遺伝子を搭載したAAVベクターを被殻に注入することにより、被殻において内服したL-dopaのドパミンへの変換を産生します。その結果、運動症状の改善が期待されます。

自治医科大学では、20年以上にわたりAAVベクターに関する研究を進めています。2007年には米国の企業とAAVベクターを使用した同様のプロトコルによるパーキンソン病の遺伝子治療臨床研究を実施し、安全性を確認しています。今回の研究では、国産のベクターを使用し、前回と同様の用量3×1011 (vector genome)に加え、高用量9×101 (vg)の投与を計画しています。

 

■ 今後について

現在、AAVベクターを大量に生産する研究開発も並行して行っており、治験に向けて準備を進めています。